「NTTデータのダイバーシティ推進」

Fathering Company
文責:岩野

Fathering Companyの第一回目は、情報サービス事業で業界最大手であるNTTデータを取材した。 NTTデータは今年度、NPO法人日本マザーズ協会が毎年発表している「ベストマザー賞2009・団体の部」を受賞し、 出産育児・子育て支援などの取り組みを推進する企業として注目を浴びている。 今回はダイバーシティ推進を発信していく立場にある堀川佐渡氏(人事部)と、現場で勤務する若手女性社員の増渕絢乃氏(郵政システム事業本部)にお話を伺った。 

ダイバーシティ推進を語る堀川佐渡氏
 

堀川― 「当社では、ダイバーシティを『多様な価値観・発想を経営に取り入れることで、 ビジネスの環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、 企業と個人の幸せにつなげようとする戦略』(日経連「ダイバーシティワークルール研究会報告書」より引用)と定義しています。 そして昨今巷でよく耳にするワークライフバランスは、概ねダイバーシティの中に包含されるものであるという意識でいます。」 
「このワークライフバランスについては『ライフを優先して仕事の優先度を下げても良い、 すなわち社員個人はハッピーでも会社の仕事は回らなくなるのではないか』という誤った認識を持つ方が少なくないと思います。当社の中でも『ワークライフバランスやダイバーシティは、社員を怠けさせるのではないか』 という間違った考え方を未だにしている社員もゼロではありません。」
 「しかし、当然ですが、私たちは『社員を怠けさせるための』ダイバーシティ推進をしているわけではありません。
①少子高齢化や男女共同参画社会の推進、障がい者雇用などの社会からの要請、
②優秀な人材の確保や競争力の向上などの企業からの要請、
③ワークライフバランスの推進、自己実現などの社員個人からの要請
といった3つの異なる層からの要請を踏まえ、取り組んでいます。」

○ダイバーシティ推進の実施後と実施前、実際の現場ではどのような変化が起きているのでしょうか?

 

現場を語る増渕絢乃氏
 

増渕―「ダイバーシティ推進で一番効果が現れていると思うのは、『変革グループセッション』という全部長向け研修です。 この研修は、『職場のコア』な存在である部長層への啓蒙が一番有効と考えて全社として取り組んだものです。」
「この研修が終わった後に、部長には研修で学んだことや自分が宣言したことを実現するために、 職場の部下と一緒に話し合うセッションを必ず開催してもらい、具体的な働き方の見直しに向けた変革活動をスタートしてもらっています。」 
「こうして中間管理職層が意識することによって、少しずつ職場の雰囲気が変わり、職場単位で積極的に取り組んでいるなと感じています。 ダイバーシティ推進室ができてから、ダイバーシティ関連の社内イベントも増えていますが、 その一つである『パパセミナー』の案内も私の職場では部長から社員に伝えられました。 これは『業務時間中にパパなんてプライベートなセミナーなんてけしからん』というように古い世代の男性なら考えても良さそうなところですが、 部下のワークライフバランスのために積極的に出るようにと後押ししてくれる、とても大きな変化だと思っています。 」

○若手の男性社員さんの意識も変わって来ていますか?

増渕―「同期の男性と話していても、出産、育児に対して意識の高い人が多いですね。 私は入社5年目で、そろそろ結婚や出産という今後のライフプランを具体的に考えている時期なのですが、 最近は子どもを持つことを強く意識しています。それで男性社員と話す際に、実際『結婚どうするの?』と話したりすることもありますね。 社内のセミナーの情報もこれまでより分かるようになっているので、これからセミナー参加者も増えてくると思います。」

○NTTデータはここ1年間で、2団体しか表彰されないベストマザー賞2009の団体の部を受賞、 東洋経済新報社が実施している「ダイバーシティ経営大賞」で入賞こそ逃したものの最終選考の17社に残られていますが、短期間でここまで成長した要因は何ですか?

堀川―「ダイバーシティ推進だけでなく、近年の当社の企業変革の取り組み方法として、 『ボトムアップ』と言うキーワードが大きな特徴として挙げられると考えています。 X-NEXT(クロスネクスト)という社員発のいろんな提案を経営層に定期的にぶつけることのできる仕組みが、当社にはあります。 」
「まず、企業変革のために『こういうテーマを検討して経営層に提案したい!』と思う社員が、Webでテーマを登録(『指を立てる』)します。 例えば『ペットボトルキャップを集めてワクチンを贈ろう』とか『企業内託児所を作りたい』とかです。 すると社内のWebサイトにテーマと指を立てた社員が掲載され、合わせて『こんなことをやりたい』という内容が表示されます。 それを読んで一緒に検討したい、と思った社員はテーマに賛同する(『指に止まる』)ことでチームメンバとして検討していく、という仕組みです。 今では年2回、経営層に提案できる場が用意され、本来の業務以外にこのような活動に勤務時間を使うことについても(制限はありますが)全社的にオーソライズされています。」
「そしてこの仕組みから、『社内SNS』や『テレワーク(在宅勤務)制度』などが実際に生まれています。 これらも強い想いを持った熱意ある社員が経営層に直接提案し、経営層からのゴーサインによって本格的に検討して形になったものです。 このように、『トップダウンの全面的なサポートがあるボトムアップ活動』というのが、当社における企業変革活動の大きな特徴であり、成功している秘訣だと思います。」

○ありがとうございます。それでは最後に、お二人から学生へメッセージをお願いします!

増渕―「悔いのない学生生活を送ってほしいです。 自分が何をしているときが一番自分らしくいられるのかを学生生活を送りながら感じてもらい、その中で自分の働きたい職種を探して欲しいです。 また、OB・OGに話を聞くことで、よりイメージを明確にすることができるので、就職活動の際は是非会って話を聞いてもらいたいです。 実際、私は就職活動中にたくさんのOB・OGの方にお会いしてお話を伺いましたので、就職前のイメージと実際の会社生活にギャップはあまりなく働くことができています。」

堀川―「就職活動を通じて、『自分が本当は何をやりたいのか』を考えてはっきりさせてもらいたいです。 あまり考えずに就職活動していざ働いてみたら『考えていたことと違う』となってしまったら、皆さんにとっても採用した企業にとってもアンハッピーだしもったいない。 働くということは生活の糧を得る手段である反面、自己実現のため有効な手段でもあります。『自分は将来何をしたいんだろう?そのために、どんな仕事を通じて誰に対してどんな貢献をしたいのだろう?』ということを、 良く考えて就職活動してもらえればと思います。 」

その他、ダイバーシティ推進の2008年度における主な取り組みは以下の通り。

Women’s Summit Tokyo2008

当社を中心に5社1団体で共同開催。 20社200人の「もうすぐ管理職になる中堅層」の女性社員を一堂に集め、 キャリアの歩き方をテーマに基調講演、パネルディスカッション、デモロールプレイ、グループディスカッションを行った異業種交流イベント。 参加者の満足率は96%であった。

女性社員向けダイバーシティ・ワークショップ

点在化しがちな女性社員同士の社内人脈形成とキャリア構築支援を目的に、中堅層の女性社員をターゲットに3日間に渡って開催したワークショップ。 様々な部署の女性社員をグループ分けして、ディスカッションを通じて悩みやキャリアのヒントを共有し、 最終的に自分のアクションプランと会社・組織への提言を会社幹部の前でプレゼンしてもらった。

若手社員異種交流研修

プレゼンスキルの向上と会社を超えた人脈形成を目的に、6社約40名を対象に実施した異業種交流研修。 プレゼンやスピーチのスキル向上のためにグループワークを行ったり、 ビジネスに適した見た目(服装、髪型、化粧など)をカラーコーディネータ―の先生から指導してもらったり等、独自の視点で若手女性社員を対象に実施。

ダイバーシティ・フォーラム

全社員向けの社外有識者によるセミナー。 2008年度は女性社員や若手社員のホンネと企業側・上司のホンネのギャップをテーマに講演し、社長を始め100名以上が参加。

パパセミナー

「父と子の愛着形成委員会」(文科省からの受託調査実施委員会)との共同で、社内のパパ・プレパパ社員を対象にセミナー&ランチ意見交換会を実施。 Fathering Japan代表の安藤氏などにも来てもらい、平日業務時間内に会社の会議室でスーツ姿の社員が育児について講演で学び、 パパ社員同志で育児について語り合い、参加者の満足度は96%と盛況であった。

裁量労働制

仕事の進め方と時間配分を自己の裁量に委ねることで、仕事に対する意識を高めるとともに、業務効率化の促進、活き活きと働ける職場環境の醸成を行う。 現在管理職に適用すると共に、一般社員にはトライアルを実施している。

長期連続休暇の推進

メリハリのある働き方を推奨するため、プロジェクト終了時点で連続5日以上の長期休暇を取得する「プロジェクト終了後等休暇」や、2週間連続休暇の取得を推進。 特に休暇積み立てが多い管理職については率先して長期休暇の取得に取り組んでもらうために、勤続5年の節目を迎えた者の中から対象者を選定して、 2週間連続休暇を取得することを義務づけている。

テレワーク(在宅勤務)

社員の提案をきっかけに、トライアルを経て本格制度化した勤務形態。 セキュリティ面に配慮しつつ、原則月8日までの在宅勤務を認めている。 働き方を変えるきっかけとして、かつ環境志向経営の一つの働き方として、全社的に推進している。

 

株式会社NTTデータ

データ通信やシステム構築事業を行っているシステムインテグレータ。情報サービス事業では業界最大手である。NTTグループ。

URL: http://www.nttdata.co.jp/