Fathering Company第二回
トヨタ自動車株式会社
文責:西村 創一朗
―Fathering Company第二回目のインタビューは、「世界のトヨタ」ことトヨタ自動車株式会社の東京総務部人事室担当課長の宮島道信氏と、同じく人事室で勤務時間の管理などを担当する社会人3年目の若きエース、佐野友則氏にお話を伺った。
「ワークライフバランスに対する取り組みはまだまだこれからというところ。」と話す一方で、トヨタは100%近い有給休暇消化率を誇る。その秘訣はいったいどこにあるのだろうか?
「強い職場」づくりに意気込む宮島氏。
○貴社におけるダイバーシティに対する取り組みにはどのようなものがありますか?
宮島―「当社にとっては、2002年が本格的な取り組みの初年度になります。それ以降、主に女性社員への支援というかたちで取り組みを行ってきました。具体的にはDIVERSITY PROJECTと呼んでおりまして、『仕事と育児の両立支援』、『キャリア形成支援』、『風土・意識改革』を三本柱として掲げ、女性本人への動機付けはもちろんのこと、働く環境である職場の風土づくりも行っています。」
○そこにはどのような背景があったのでしょうか?
宮島―「女性社員の中で、出産や結婚を機に辞めてしまう人が総合職・一般職を問わず多いという背景がありました。それですと、『長期で人材を育成する』という当社のビジョンからみても、非常にもったいないですし、ビジョンが実現していないということになってしまいます。そんな危機感の中、当社の中で『多様な働き方や多様な人材を認めていくことが、強い組織をつくる』という考え方が広まりつつありました。そこで、社員の働き方の見直しや、障害者雇用やキャリア採用など社員の多様化を行うことで職場に揺さぶりをかけて、さらに強い職場をつくっていこうということになったのです。」
○「強い職場」とは?
宮島―「トヨタでは、よく「職場力」という言葉が用いられています。簡単にいえば、いかに強い職場をつくるか、ということです。仕事の質や量、あるいは解決すべき課題が変化した場合にも、職場内で柔軟に対応することができ、それぞれの職場で一人ひとりがやるべきことを果たせる。それが「強い職場」です。」
○トヨタは第一回「父親が子育てしやすい会社」※1で第3位に選ばれていますが、その理由についてお聞かせください。
宮島―「当社は『父親』のみにスポットを当てた施策はありませんが、1年に一度社員の家族に向けて実施している『職場見学会』に昨年、安藤さん※2をお招きして、ワークライフバランスについての講演と絵本の読み聞かせのライブをしてもらいました。そこに参加した男性社員の意識は確実に変わりました。また3位に入賞した理由としては、時短勤務やフレックス制があるなどの理由もありますが、 なかでも年次有給休暇の消化率がほぼ100%を達成している点が大きかったと思います。
○有給休暇取得率ほぼ100%!の秘訣は?やはり「強い職場力」にあるのでしょうか?
佐野―「そうですね。当社は(有給休暇を)すごく取りやすい職場の環境になっていると思います。やっぱり『周りの目が気になって休めない』ということが多いと思いますが、上司が率先して取得を促すなど、部下が取りたいときに取れる風土になっているので、それが要因の一つではないかと考えています。」
宮島―「計画的にしっかり休みが取れる職場が、よい職場・強い職場であるという評価があります、また『職場天気図』というものがあります。」
○職場天気図ですか?
佐野―「はい。それを見ると、どこの部署で3DV※3の取得が進んでいて、どこの部署ではそうでないかがすぐわかるようになっているんです(笑)」
○非常に面白い取り組みですね。(笑)
トヨタで「大きな成長」を実感。
「成長」について熱く語る佐野氏
○次に佐野さんにお伺いしたいのですが、3年間働いてきて「働きやすさ」はどのような部分で実感されていますか?
佐野―「私の部署は9名おりまして、私たち二人以外は全員女性なんです。だから男同士の結束も強まりました(笑)。また当社には『職場先輩』という制度がありまして、3年目までは3,4歳くらい上の先輩がついて、日々の業務やスケジュールの相談にのってもらえるのです。怒られることも多々あるのですが、先輩と相談しながら仕事ができることで、日々成長と働きやすさを実感しながら働くことができています。」
宮島―「周りも『成長させてやろう!』という気概が強くて、それもトヨタの特徴のひとつだと思っています。去年の研修の成果発表のときも大変でしたよね。」
佐野―「はい。(笑)当社では入社2年目に研修の一環として『トヨタの問題解決』というのをやるのですが、その成果を本部毎の部長が勢ぞろいした中で発表するのですが、その準備のときに『職場先輩』に毎日すごい遅くまで手伝っていただいて、かなりお世話になりました。(笑)とてもつらかった記憶がありますが、大きな成長を実感できました。ひとつ大きなことをやり終えたことで、大きな自信をつけることができました。」
人生の学校は終わらない。
○ありがとうございます。それでは最後に、お二人から学生へメッセージをお願いします!
佐野―「学生時代に経験すること、したことを少しも無駄にしないように、社会人になったときに活かせるよう、大学生活を楽しんで送っていただければと思います。」
宮島―「大学生活は多くの場合は4年で終わってしまいますが、『人生の学校』は終わりじゃないので、その中でいかに自分を大切にして、育てていくのかが大事です。仕事や生活、家庭や子育て、地域社会とのかかわり方などすべて含めた全体のライフデザインを考えていただければと思っています。」
~取材を終えて~編集後記/西村 創一朗
Fathering Companyの第二弾として「世界のトヨタ」を取材・編集を担当させていただきました、西村です。何より感じたのは、トヨタには「強い職場」を創るトヨタウェイがあるということ、さらにトヨタだからこそ経験できる「成長を実感できる場」があるということ。ランチを含めてわずか2時間足らずの取材時間でしたが、「トヨタがトヨタたるゆえん」の片鱗を垣間見た気がします。
いまの経済危機も「強い職場」を持つトヨタであれば、一早く切り抜け、21世紀の日本をリードしつづけていくのだろうなと感じました。
宮島さん、佐野さん、取材にご協力いただきどうもありがとうございました!
注
※1…第1回は平成19年2月に調査。NPO法人ファザーリングジャパン・第一生命経済研究所の共同調査。従業員数301名以上の上場企業を対象に実施。労働時間・休業制度・啓蒙活動等の項目別に点数をつけて総合して順位をつけた。
※2…NPO法人ファザーリングジャパン代表理事、安藤哲也氏のことを指す。
※3…3day‐vacationの略。3日以上連続した年次有給休暇の取得を促す独自の仕組み。